大津市・志賀町合併財政シミュレーションについての見解
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大津市・志賀町合併財政シミュレーションについて
日本共産党大津市会議員団
日本共産党志賀町議員団
2005/02/28
■現在の合併協議の問題点
現在法期限内の3月末の合併調印に向けて急ピッチで合併協議が進められているが、合併後の新市の財政見通しがどのようになるか、その影響すべてにわたって詳細を示して議論することが必要であるにもかかわらず、当局の責任ある合併財政シミュレーションが示されないことは遺憾である。
特に、合併法定協議会委員、大津市議会議員からの再三にわたる請求にもかかわらず、今日までその情報が示されないことは、住民の立場に立ったものでなく、合併協議の形骸化を示したもので、その正当性すら疑わせるものと言わなければならない。
また、現在志賀町で、合併の是非を問う住民投票条例の制定請求が行われているが、このような情報を提供して初めて住民が将来のまちづくりについて主体的な判断をすることができるものであり、そのような意味からも財政シミュレーションなどの情報提供をきちんと行うことを求めるものである。
■長期的には交付税の減少や特例債の返済が、行政サービスの大幅な後退につながる
私たちが独自試算した合併財政シミュレーションでは、当局が試算している合併後10年間という短い期間ではなく、合併特例債の償還が終わる30年後までの検討を行った。
その主な特徴は次の通りである。
(1)合併当初は交付税の算定替えをはじめ合併特例債を使っての基金造成など、様々な特例措置によって大きな黒字を計上するが、これらは一時的なものであり、12年後からは赤字に転ずる。
合併支援の特例措置は、30年間の収支で見れば、103億円の赤字となるもので、特例債が市民の利益になると言って、法期限内の合併を急ぐ理由はない。
(2)合併特例債の元利償還のピークを迎える14年後(2019)から21年後(2026)までの8年間では、累計で24億円あまりの赤字を計上することとなるが、この時期の財源不足を補うために、今日の行財政構造改革を上回る、市民のための行政サービスが大幅に後退するおそれがある。
また、その準備のためとして、早くから独自施策などを中心とするサービスの後退、公共料金の値上げなどが行われるおそれがある。
(3)合併による収支改善効果の大半は、職員削減=合理化によるものであるが、目片市長の定例記者会見でも明らかにされているように、現在の志賀町役場での総務・企画などの機能をのぞく住民サービスの提供も、3年ほどしか実施できない。
急速な職員削減をしなければこの効果を生み出すことはできないためで、他の事務事業の経過的措置もこれと同様である。志賀町住民にとって、窓口業務を中心とする行政サービスが大幅に後退する可能性がある。
(4)今回のシミュレーションの中では、両市町の事務事業の調整による影響は当局の出した乳幼児医療費助成など、ごく限られたものとなっている。
大津市が単独で実施している事業の対象者数が増大した場合の影響など、さらに詳細な検討が必要とされる。
■財政難の中で、格差是正を理由とした公共事業がさらに進められる
合併協議会で示されている市町村建設計画では、4分野26項目に上る事業計画が掲載されている。
協議の中で、この事業費総額をどの程度の規模と予定しているか想定されていないが、合併特例債の事業費規模214億円でカバーできる額ではないことは明らかである。
施策の均衡を図るという理由で、90年代に行われたような「モラルハザード」とも言うべき、公共事業中心の財政運営が復活するきっかけともなりかねない。その影響は、このシミュレーションを上回る深刻な影響を市民生活に及ぼしかねない。
■財政面から見ても、この合併は住民の利益にならない
以上の分析から、今回の大津市・志賀町の合併は、財政面から見ても両市町の住民の利益とならないことは明らかである。
この間、国による地方交付税削減の動きをとらえて、「志賀町が単独のままでは立ち行かない」などとする議論が横行しているが、地方団体の働きかけなどの中で、地方交付税の財政調整機能、財政保障機能はなくなるものではない。
志賀町において「合併しない場合の財政シミュレーション」など、自立したまちづくりの可能性の検討を行う必要がある。