市庁舎整備についての日本共産党大津市会議員団の見解
庁舎の移転新築を見直し、学校の耐震化や暮らし優先の市政を
日本共産党大津市会議員団
2006/07/31
現在大津市では庁舎の @あり方全般、A役割・機能・規模等、B整備の候補地に関することについて、パブリックコメントが行われている。
大津市では、新耐震基準以前に建てられた市庁舎本館・別館の耐震診断の結果、耐震性能の不足が指摘され、その整備を検討している。2004年度には技術部会・若手部会・防災部会の3つの専門部会を設けて職員レベルでの検討委員会を設置。
翌年度には職員レベルでの研究会が設けられたが、その研究会のまとめができないうちに、今年1月に市長は、「庁舎の浜大津への移転新築が望ましい」と表明し、度重なる記者会見でも浜大津への移転新築へ意欲的な姿勢を示してきている。
この4月には「市庁舎あり方検討委員会」を設置し、今年度中に結論を出そうとしている。
日本共産党大津市会議員団は、庁舎の耐震整備は必要と考えるが、まず災害時の避難所にもなっている学校施設の耐震化を優先させるとともに、現在の庁舎をできるだけ長く使い続けられるよう、他都市の耐震改修の事例も参考にして、必要最小限の耐震改修(免震改修)で対応するよう提案するものである。
以下、庁舎の移転新築について問題点を指摘し、市政のあり方を問うものである。
第1に、庁舎の建て替えより先に、遅れている学校施設の耐震化を進めるべきである。
子どもたちが毎日通う学校の校舎・体育館は、災害の際の地域の避難場所として重要な施設である。
日本共産党大津市会議団は、学校施設や庁舎の耐震化について、免震工法による庁舎の耐震改修を行った神奈川県厚木市、今年度より同じく免震工法により庁舎の耐震改修をはじめた三重県四日市市、庁舎の移転新築を進めている町田市を視察した。
厚木市や四日市市では、学校など市民の災害対策の拠点の耐震化のめどを立ててから庁舎の整備に取り組んでいる。今年度より庁舎の耐震改修を進めている四日市市では、小中学校の耐震改修を2000年度より進め、対象校61校は体育館も含め、14億6千万円あまりで耐震改修工事を終えている。
厚木市では1986年より学校の耐震診断を実施、耐震診断と並行して1995年度より、耐震改修工事を開始し、校舎40校、体育館5棟総額22億8000万円で終了。2007年、08年度には残り6つの体育館の耐震改修を計画し、全ての学校の耐震化を完了しようとしている。
しかし、大津市ではこれまでに耐震改修を行ったのは、膳所小学校の4棟のみである。
耐震診断は9割近く終了し、小・中学校の校舎161棟・体育館32棟に耐震性の不足が指摘されているのに、耐震化率は43.7%と県下で4番目に遅れている市町となっている。
進まない理由として、耐震改修工事にかかる費用が多額になる(総額220億円)として、「予算的にすぐには対応できない。ある学校を先に改修すれば、『なぜそこだけ』となる」と説明している。
今後2008年度から取り組むとしているが、必要最小限の耐震化を目標として、ただちに耐震改修の計画をもち、来年度より実施するべきである。
第2点目は、庁舎の耐震化が移転新築先にありきで進められ、多額の改修費用を見積もっていることである。
2004(平成16)年度大津市庁舎整備検討委員会で行った耐震対策の比較検討で、概算費用を耐震改修(本館・別館とも免震工法)で170億円、移転新築で210億円かかるとして、今後の庁舎整備の方向として移転新築に一定の妥当性を認めたと総括をしている。この総合評価は移転新築を○と評価しているが、耐震対策概算費用比較検討にはいくつかの問題がある。
@1つ目は比較検討の前提として庁舎の必要面積を44500uとして進めていることである。
これは起債許可標準面積に基づいて算定しているに過ぎない。これによって、耐震改修費用に増築分12000u、総額52億8千万円もの新庁舎がうわのせされている。
実際にこれだけの増築が必要かどうか検討が必要であり、のべ床面積6167uの旧志賀町役場の有効活用も考えるべきである。
A2つめは免震工法による耐震改修の費用について精査が必要である。
建物の基礎下部に免震装置(アイソレーター)を設置し、地震時の揺れを低く抑える免震工法は、いながらに工事ができるというメリットがあり、全国的にみても、免震工法で耐震改修をするところが増えてきている。
本市庁舎の場合、いながらでの工事ができないとして、仮設庁舎が必要として、費用も17億3千万円も見積もっている。地下1階の一部床の補強の必要性が言われているが、いながらにして工事ができない根拠がはっきりとしめされていない。
四日市市や厚木市庁舎では、庁舎のまわりを掘り下げる免震工法による工事の際、出入り口の変更などについては、両市ともその都度市民に周知し、騒音についても休日に工事をできるだけ集中して対応するなどの工夫をしていながらの工事をしている。
B3つめは本庁舎・別館の改修の際のリニューアル費用が、43億円と多額の見積もりがされている。
例えば四日市市庁舎ではエレベーターの取り替えや外壁改修工事、屋上防水などは免震改修費以外に6億円あまりであり、その他の改修は年次的に計画をして対応することにしている。
厚木市でもさまざまな修繕にはわずか3200万円程度であり、免震改修を含めても総額20億円である。
リニューアルの費用43億円は、国土交通省の指針に基づいて20万円/uとして示しただけに過ぎない。また全面リニューアルをすることを前提にしているが、実態に則して、改修費用を見積もるべきである。
以上本館・別館の免震工法による耐震改修に170億円もの費用がかかるとした改修の概算は、移転新築を根拠づけるために必要以上に多額に見積もったと言わざるをえない。
第3点目は、市財政と市民生活の状況をみたときに、庁舎移転新築を聖域にして事業を進めてよいのかどうかという問題である。
格差や貧困の拡大が言われているように、市民生活の現状はますます大変である。
今年度は老年者控除の廃止、公的年金等控除・定率減税の縮小などにより高齢者に大増税が襲いかかっている。
その上、大津市ではこれまでの行財政構造改革で、寝たきり高齢者の紙おむつ補助の削減や障害者のガソリン代・タクシーチケットの補助削減を行い、今後3年間に113億円の収支不足が生じるとして、今後の集中改革プランでは大型ゴミや家庭系ゴミの有料化を検討するなど、いっそうの市民負担を課そうとしている。
しかも今年度より5か年で15億円の庁舎建て替えのための基金を造成するとして、今年度は5000万円を積み立てている。市財政は年間の予算を上回る1000億円の借金を抱えており、庁舎建設を短期間に進めることは、市財政をいっそう深刻な危機に追いやる危険もある。
いま自治体の役割としてまず行うべきは、市民生活の安定である。庁舎の移転新築を聖域として財政運営を進めていくことには、市民の理解はとうてい得られない。
財政的な面だけでなく、現在の大津市庁舎が景観面でも古都の景観にとけ込んだものであり、一つのランドマークとなっていること、庁舎取り壊しによるゴミや環境問題を考えても現在の建築物を長持ちさせてあと30〜40年は利用していくことが、理にかなった方法であると考える。
さらに市民の中には、市長が進めようとしている浜大津への移転は湖岸の景観を阻害するものであり、中心市街地の活性化にもつながるものとは言えないとする意見もある。
これらの諸点を踏まえ、庁舎の移転新築先にありとする今のやり方を見直し、提案している諸点について検討を行うよう強く求めるものである。